山形漆掻き日誌 −2

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第5回 2005.8.27

今回は十二辺目です。

8月19日に十二辺目を掻きました。前回のコラム七辺目以降の採取日は7月26日八辺目。8月1日九辺目。6日十辺目。10日十一辺目を掻いてきました。
お盆時期は盛漆の中でも特に良質な漆が採取できるといいます。6月から11月までの採取期間で最も暑く、木の成長する時期と重なるからだそうです。
今年の東北地方の梅雨明けははっきりしなかったようで、8月の初めまで梅雨時期のような雨が降っていたそうです。その為、中3日で採取可能なのが雨で掻けないこともしばしばあったようです。今回のお盆期間中も時折強い雨が降りました。
写真はキズを入れる前に鎌で皮を削っているところです。6月頃より皮が厚くなったようです。削る面積は掻き子さんによって違い、ある人は二回分(二辺分)まで皮を剥ぎ、次回掻いている時に雨が降りそうになったら既に皮は削られているのでキズだけいれて採取できます。
これなら皮を削る時間が省け、雨が降る前に予定通り採取する事も可能です。
 

またある人は、今日キズを入れる所だけ皮を削ります。皮は本
来、木自体を守る為に表面に硬く厚くできているもので、それを必要以上に削ると木が弱る危険性があり、削った所も乾いてきて漆の出に影響を及ぼすと言っていました。
どちらも経験に基づき多くの漆を採取してきた方のお話しでしたので、両方とも正しい作業だと思います。今回の山形では本数が5本で短時間で作業は終るので、キズを入れる所だけ皮をそのつど削るようにしています。 

第6回 2005.9.15

今回は十五辺目です。

9月10日に十五辺目を掻きました。お盆以降の漆掻きは、8月27日十三辺目。31日十四辺目を掻いてきました。今回の漆掻き前に台風の影響で10日空いてしまいましたが、その分漆の出具合いはそこそこ良かったと思います。写真は高い所に十五辺目のキズを入れ採取している所です。6月の鎌付け(目立て)で若干間隔が広かった事、漆鉋の扱いにまだ慣れていないので真っ直ぐなキズを積み重ねられていない為、辺付けの位置が高くなり上の方が掻きずらくなる場面も出てきました。


9月からは大体末漆になります。盛漆に比べ水分量が増えてきます。秋は紅葉の季節であり気温も下がってきますので、木は弱り漆の出も少なくなってきます。
その為、今まで通り中3日で掻きますと水っぽい漆になってしまいます。葉の色や量、気温を気にしながら徐々に休ませる期間を長くしていきます。

 

 
 

初は掻いている5本全てを殺し掻きの予定でしたが、1本は養生掻きにまわす事にしました。

僕も養生掻きは行った事が無いのでどうなるかわかりませんが、「備中漆掻き」と云う本には、「普通は、十七、十八回で辺掻きを止めておく。(中略)若木なら五年、古木なら七年位で又掻ける。十五辺位で止めておけば五年後位にまた掻ける。…」と、書かれています。

しかし辺掻きを二十五回行う人の目安ですから、大体お盆過ぎには掻くのを止めていると思われます。若い木ですから3年から5年後位でまた掻けたらよいと思います。


今回は午前中は漆掻き、午後は来月から行う裏目掻きで使用するハシゴを作りました。写真が出来たハシゴです。2m弱あります。

次回の裏目掻きで詳しくハシゴの使用について触れてみたいと思います。 


第7回 2005.10.21

今回は「裏目掻き」です。


10月15日に裏目掻きのため山形に行ってきました。十五辺目以降の漆掻きは、9月16日十六辺目、23日十七辺目、10月3日十八辺目を掻いてきました。辺掻きは以上で終了しました。9月以降、大分休ませる間隔が長くなっていますが、気温が下がりはじめ紅葉も始まると木の回復が遅れてしまうからです。回
復前に採取した漆は水っぽくなってしまいます。


今回の山形行きは残念ながら雨で、その日は漆掻きができませんでした。その為、傘を指しながらキズを入れる箇所を説明して終りました。裏目掻きと止掻きは、殺し掻き特有の掻き方になります。


 

 

今までの辺掻きでは、左右五箇所を互い違いに配置し、キズを少しずつのばしながら掻いていましたが、正面と背面は必ず間隔を空け樹液の流れを遮断しないようにしてきました。

裏目掻きからはその樹液の流れ部分にもキズをのばし、木に残っている漆を最後まで採取してしまいます。そこまで掻くとその木はもう回復することはありません。

雨の為に掻けなかった日から3日後、天気も良くなり裏目掻きを行ったそうです。今までキズを入れなかった所もハシゴを使用して上まで掻く為、結構漆が採れます。

上まで登ると落ちないように片足を木に掛けて掻くので、お腹や脚がカブレやすいです。裏目漆自体もカブレやすいみたいです。

裏目漆は辺漆に比べ乾きがとても遅く粘りが強い感じです。しかし乾いた後はとても堅くなり、下地に使用すると良いそうです。裏目掻きは葉が落ちきる寸前頃に採取すると沢山採れると掻き子さんが言っていました。

 


今回はまだ葉も多く紅葉もそれほど進んでいなかったので、末漆に割と近い漆が採れていると思います。 

第7回 2005.10.21

今回は止掻きです。

11月5日に止掻きを行いました。裏目掻き以降三週間弱空きました。
今回は、昔山形で漆掻きをしていた方がいらっしゃいました。漆掻き歴35年だったそうで、我々が漆掻き作業をしている事を近所の人から聞き、当時使用していた道具を持ってきてくださいました。漆鉋、ヘラ、鎌は我々が使っているものより幾分小さかったです。福井(越前)や福島(会津)で道具を買っていたそうです。現在漆掻き道具を作っている方は青森県の中畑さんが主で、我々もその道具を使用しています。


道具や本を見ながらお話しを伺い、漆掻き作業ではメサシの入れ方や漆の出る木等を教わりとても勉強になりました。

 


11月にもなると浄法寺で漆掻きをしていた時は葉も殆んど散っていましたが、今回はまだ大分残っていました。浄法寺よりも南に位置している、若しくは今年の秋が暖かかった為でしょうか。
 

止掻きは、裏目掻きで付けたキズとキズの間に残った漆を採取しますので量はあまり採れません。出てくる漆は白くて粘性が高く、極端に乾きが遅いです。

今回は皆で舐めてみたのですが、甘味があり後から少し渋さを感じました。盛漆に比べると樹液に近い甘さで「旨い!」と言う人もいました。


採取後、掻いた木を根元から伐り倒しました。そうする事で来年切株の近くや根から発芽しやすくなり、順調であれば10年後にまた掻けることでしょう。


 

今年掻いた漆の量は、一本の木から150グラム位採れたようで上々かと思います。まだ発酵中の為使用しておりませんが、実用には全く問題無いかと思っております。


来年以降も数本であれば継続的に採取が可能なようですので、僕も今年ほど山形に行く事はできないと思いますが、たまに様子を見に行きたいと思っています。

 

これで2005年の山形漆掻き日誌は終了いたします。

 

Copyright (c)onishi tomohiro大西 智洋

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