浄法寺漆かき日誌 |
|
| トップページに戻る | 大西智洋さん |
|
著作権は大西智洋さんにあります。 転載の時はわたしにとりあえず、ご連絡してくださいね。 |
目次
| その1 | 漆の話 | |
| その2 | 裏目漆 | |
| その3 | ご紹介 | |
| その4 | カブレ9 | |
その5 |
雨の日 | |
| その6 | タカッポ | |
| その7 | タカッポの作り方 | |
| その8 | 裏目かきが終わり | |
| その9 | 裏目漆のかき方 | |
| その10 | 漆の木の成長 | |
| その11 | かき子さんの一日の流れ | |
| その12 | シーズンオフの過ごし方 | |
| その13 | 止めかき | |
| その14 | 現代の漆の精製方法 | |
その15 |
瀬しめ漆 | |
| その16 | 酒 | |
| その17 | 切り倒し | |
| その18 | 道具の寿命 | |
| その19 | 出荷用の漆の樽 | |
| その20 | 漆の成分分析 |
|
| その21 | 浄法寺漆かき日誌最終回 | 2001.11.12 |
おはようございます。新幹線の中から発信しています。いよいよ最後となってしまいました。日誌の内容はともかく、僕なりに楽しく報告してきました。2、3回辛いこともありましたけど(笑)。最後の日誌、ご覧下さい。大西智洋 木も切り倒し、引っ越しの荷造りも終え、"漆かき、大西智洋"が終わろうとしています。以前泉さんに、「このコーナーのタイトルに"浄法寺"と、どこかに入っていますか?」と聞いたことがあります。何故なら、地域によってかき方の違い、気候の違い、更に言えば個人でも仕事が違っています。誰が正しい、間違いではなく、それぞれの地域・かき子さんの「歴史」・「経験」が裏付ける「答え」であり、浄法寺はその「答え」の数が一番多い漆の産地と思います。僕の日誌はその個性豊かな「答え」を短い間でしたが教わり、その場でしか聞くことのない話を思い付くまま報告してきました。そのためタイトルに「浄法寺」と入らなければなりません。泉さんは聞くまでもなくしっかり「浄法寺」と入れてくださっていました。この場を借りまして泉さんには僕の日誌を載せていただいたこと、そして読んでくださっていた方にお礼を申し上げます。短い間でしたかどうもありがとうございました。 番外編 今までの日誌で少し訂正があります。木を切り倒して山に放置しても2〜3年では、皮が腐る程度で材部までは腐りません。漆の木で木工をする人は山に2〜3年放置していた木を製材しているそうです。かき子さんから実際に放置していた木を見せてもらいましたが、皮だけが全て腐り、剥がれていました。その木は直径20センチくらいで樹齢30年位の木でした。年輪幅がとても狭く、黄色がとても鮮やかでした。その木で来年漆かき道具の柄を作り、漆樽を作ってもうそうです。 木を切った後の切株をわざわざ割ることはしていないそうです。ただ、切口から生えてきた新芽は切るそうです。手首くらいの太さになっても簡単に折れるそうなので、土の中から出てきた芽を育てるそうです。 最後に"漆かき"の、"かき"が漢字でなかったことにお気付きの方も多かったと思いますが、僕の携帯では漢字が出てこなかっただけです(苦笑)。 おわり。 |
漆の成分分析 20001.11.9先日、自分がかいた漆の成分分析を行いました。成分分析によりウルシオール(以下、ウルシ)、水分(以下、水)、ゴム質(以下、ゴム)、含窒素物(以下、含)の占める割合が分かります。ただ、今回載せた数値は余り当てにしないでください。何故なら全て1つしかサンプルを取らず(本来は同じ樽の漆から5つ位取り、平均値を出しますが時間が無くできませんでした)、また教わったばかりの実験方法なので正確性に自信が持てません。しかし、わりと良い数値が出てしまい(笑)、求めていた結果を計らずも得られました。数値は目安としていただきまして、成分分析方法と各成分の分解方法を報告します。 初漆はウルシが73.5%、水が20.9%、ゴムが0.9%、含が4.7%。 盛漆はウルシが74.7%、水が18.9%、ゴムが1.1%、含が5.2%。 末漆はウルシ69.1%、水25.8%、ゴム0.5%、含4.6%。 裏目漆は、ウルシ69.5%、水22.5%、ゴム1.2%、含6.7%。 止め漆は、ウルシ61.1%、水26.1%、ゴム1.2%、含11.6%でした。 今回の分析は比較的簡単な装置を使用し、水分は加熱減量測定、その他は重量法で測定しました。加熱減量測定は、アルミ箔に漆を乗せ、熱を加えて水分を飛ばし、熱を加える前と後で重さを計り計算します。重量法は、ウルシオールはエタノール(アセトンでも可)で、ゴム質は熱湯で溶かし、それぞれ"ろ紙"に引っ掛かった重量を計り計算していきます。 理論上4つの成分の数値を合わせると100%になります。ただ、ウルシオールが多く水分が少ない等、数値で分かっても人それぞれ求める条件は異なります。漆の本当の良さは使って乾いてからでないと分かりませんよね。
|
出荷用の漆の樽について報告します。こちらでは隣町の一戸町で一人作っている人がいます。三貫目、五貫目樽が主で、杉の木で作られています。他に一貫目、二貫目樽もあります。昔は十貫目樽も作っていたのですが現在は使われないので作っていないそうです。あるかき子さんは、自分がかいた漆の木で樽を作ってもらっています。カッコよく羨ましいです(笑)。 新潟の渡辺勘太郎さんのところでも樽を作っている人がいるそうですが、もう87才?だそうでもう作っていないと聞きました。二貫五百匁、一貫二百五十匁の樽を作っていたそうで半端な大きさです。渡辺さんが言うには「精製したときに二貫目、一貫目になる量で出荷するため」だそうで、仲買人主体の売買だったのでしょうか。出荷する際の梱包はかなりしっかりしています。上下に藁で編んだリング状のものでクッションとしたり、藁紐で幾重にも縛っていました。昔は上面の結び目に、藁紐に和紙を巻き付けて結び、紐と紙の境界に自分の印鑑を押していたそうです。封印し、ほどいたら分かるようにするためです。 漆を空けた木の樽は、ぬか漬け、味噌樽に最高だと聞きました。 |
道具の寿命について報告します。年間400〜500本かいている人を基準に、カンナは1年、鎌は2年と聞いています。どちらも毎日研ぐ道具です。カンナの場合、最初(7辺位まで)は木に深く傷が入らないようにしていきます。そうしないと木が弱って漆が取れなくなってしまうからです。しかし、毎日研ぎながら次第に食い込みやすく、深い傷が入るようにしていきます。盛漆が取れる頃には使用前より先が鋭く、木に食い込むようになります。そのようにして、質も量も一番良い頃に深い傷が入る道具に仕立てていきます。 漆の木も道具も自分で育てていかなければならないのです。1年使ったカンナを次の年に使いますと、慎重に扱わないと深い傷が入ってしまいますので新しいカンナを使った方が楽で確実です。鎌は鋼が無くなるまで使えますので2年は持ちます。そして2年目くらいから一番良く切れるそうです。また、毎日同じ鎌だけを使わず、2本持って歩いている人もいます。 浄法寺で漆をかいている人達は皆さん、青森県田子町の中畑文利さんが作った道具(鎌、カンナ、ヘラ、エグリ)を使用しています。また、全国の漆かきのほとんどの人も同様に中畑さんの製作した道具で仕事をしています。中畑さんは漆かき道具製作に於いて選定保存技術保持者に認定されています。
|
現在、町内からは紅葉がとても綺麗に見えています。山に入りますと紅葉が少し早く、山道は落ち葉で埋め尽くされています。 木の切り倒しを先日行いました。何度か日誌で報告してきましたが、本来は止めかき後に根本から切ります。しかし現在は裏目かきまでしか漆を取っていませんので、その後に切り倒してしまいます。今回はチェーンソーで切り倒しました。切口からは白い漆が沢山出てきていました。人によって切株は斧で割る人もいます。割って切株が死ねば土の中から新しい漆の芽が生えてきます。 切株が生きていますと、切口から芽が生えてきます。切口の場合、生えたばかりの新芽が風で折れてしまう可能性があるそうです。しかし岩舘さんが「折れているの見たことねぇ」ということで切株は割っていません。その昔、チェーンソーが無かった頃は鋸、斧で行っていたそうです。斧で木を倒せば、切口がボロボロになるので切株が死んでしまうそうで、土の中から新芽が出てくることになります。倒した木はそのままにしておけば2〜3年で腐ってしまうそうです。 今回は何本か持って帰り、薪ストーブの燃料やビニールハウスの柱などにするそうです。町内でもよく、傷が残った漆の木が柱として畑に数本刺さっています。また、漆の木は良く燃えるそうです。 |
漆かきの人は(浄法寺町の人も)とてもお酒が好きです。この前あるかき子さん(70才)に「この漆、こしてくれないか?」と初漆を100グラムほど渡されました。そして「夜、歩いて持ってきてくれ、そして一緒に酒飲もうな!」と言われました。その人もやはり酒好きで、何度か一緒に飲みましたがとても強い人です。後日漆を届けに行ったところ、お酒を作っている最中でした。果物の皮を剥き、焼酎と砂糖で漬け込んでいました。 「良く来た」と言われ、取りあえず日本酒から始まりました。そのあと「去年浸けた焼酎」、「息子がヨーロッパで買ってきたお土産の酒」、「朝鮮人参を浸けた焼酎」など色々飲み、時には数種類の酒を混ぜながら飲んでいました。このかき子さんは先日、新潟の渡辺勘太郎さん(前回の枝漆、瀬しめ漆で紹介)と飲んだそうで「酒で負けたよ、先に俺が寝てしまった」と行っていました。 渡辺さんは82才、化け物です。何故漆に関わっている人はお酒好きが多いのでしょうか?
|
瀬しめ漆 2001.10.31枝漆、瀬しめ漆(中国産漆ではありません)について報告します。僕は当初どちらも同じ漆だと思っていました。しかし、新潟県の漆かき、渡辺勘太郎さん(82)に聞きますと違っていました。どちらも枝から取る漆ではあります。 どちらも裏目かき、又は止めかき後に枝を落とします。その際、止めかき(止めかきを行わない場合は裏目かき)の時に枝の根本で一周する傷を入れます。そのようにして漆が枝から逃げないようにします。そして葉が完全に散ってから枝を落とします。葉が付いていますと、そこで作られた漆が枝に下がらないそうです。そして落とす際は鋸では切らず鉈を斜めに2〜3回入れて落とします。鋸だと切口がぼろぼろになって漆が出てきてしまうからです。 長さは3尺くらいに揃えます。カンナで傷つけられる太い枝は束にして溜池に10日ほど浸けておきます。水分を含んだところで暖かくした小屋内で、カンナで三寸〜四寸間隔で枝を一周以上する傷を入れていきます。そこから取れた漆は"枝漆"になります。瀬しめ漆はカンナで傷を入れられないほど細い枝(径が1センチ前後)を火の側で暖めて、包丁で一周以上する傷を入れ漆を取ります。取れた漆が"瀬しめ漆"になります。 枝から取る漆は粘度が高いため、枝に水を吸わせる、又は暖めて粘度を下げるなどして漆をかきます。昔は先にツボミが付いた枝まで傷を!
|
現代の漆の精製方法(素黒目漆、黒呂色漆)について、僕が今回知った方法を報告します。全ての業者等が共通した方法を行ってはいないはずです。 素黒目漆は荒味漆をなやし、熱を加え、水分を飛ばしていきます。ガラスに付けを行い、色味等を見ながら仕上がりを見極めます。仕上がってから漆をこしていました。 黒呂色漆は荒味漆に鉄粉を入れかき混ぜ、少し日当に置いて発酵を活発にさせます。この段階では色の変化は見られませんでした。そして一昼夜蓋をせず置いておきます。次の日には空気に触れていた表面は薄く固まり、発酵のため膨らんでいました。臭いは既に呂色漆で、灰色でした。それをなやし、熱を加えてくろめ、ガラスにつけをしながら仕上がりを見極めます。仕上がってからこしていました。 どちらの漆も最終的な水分量は3%位になるそうです。生漆の水分量が20〜30%入っていますので、精製後は量がそれだけ減ります。かなり大雑把に報告しましたが、昔はどのように漆を精製していたのでしょうか?特に黒呂色漆を作る際、鉄粉を入れると何故発酵するのか?臭いが変わるのは何故?何故黒くなる?など、僕には分からないことだらけです。黒呂色漆に関しては以前から興味があり、不思議な漆です。そもそも漆自体が良く分かりませんけど(笑)。
|
現在、止めかきを行っています。ほとんどのかき子さんは行っていないのですが、僕の研修は「漆かき技術の習得」が目的のため、止めかきも教わっています。 止めかきはその名の通り樹液の流れを「止める」ことで、殺しかきはこの作業からきています。傷は裏目かきと同じように幹を一周する傷を付けます。傷を入れる場所は、裏目で付けた傷と傷の間と、根本の裏目傷の下に付けます。止めまで傷が入りますと、木の上から下まで傷で埋まってしまいます。漆の感じは、「裏目に比べて粘りが無いようです。きみずも溢れるようには出てきません。色も真っ白いです。ひどくかぶれなくなりました。」それらのことが要因で、乾きが遅く値段も安くなってしまうのでしょうか。一番下の傷には裏目かきと同じように、次の日には漆が溜っています。 しかし最近は毎日霜が降りますので、その漆は取らないようにしています。止めかきが終わりますと、木を切り倒します。漆の木は萌芽更新します。一度苗木を植え付けてしまえば、成木になり、漆をかいて切ってしまえば、そこからまた芽が生えてきます。 |
これからの漆かきの仕事と、かき子さんのシーズンオフの過ごし方を報告します。 裏目かきの後、止めかきを行いますが、現在はやる人もほとんどいません。量が取れない、安い等の理由からです。辺漆、裏目漆、止め漆と値段は落ちていきます。止めかきが終わると木を切り倒します。そこから傷を入れていない枝から枝漆を取ります。ほかにも根漆と言って、その名の通り根に傷を入れ漆を採取していたそうですが、枝漆同様、現在は行わないそうです。どちらも止めかき同様、採算が取れないからだそうです。 来年の漆の木の買い付けが11月頃から始まるそうです。漆に関係する冬場の仕事は枝かきしか無かったそうで、家の中で行う仕事でしたが、もっと稼げるよう、4月頃まで出稼ぎに行く人が多かったそうです。道路工事、トラックの運転手等、短期間漆かきとは関係無い職で働いていたそうです。昔は自宅で漆の木でアバギ(漁網用の浮き。漆の木は水に強く腐りづらい)を作ったり、最近は箸などに漆を塗る人もいます。 |
かき子さんの一日の流れ(漆かきの時期)を報告します。土日は無く、雨の日、お盆(せいぜい1〜2日)以外は基本的には朝から晩まで仕事をしています。時期(6月〜10月)によって日照時間の違い、それに伴う気温や前日の天気(雨、霜)などの要因から多少仕事を始める時間が異なり、かき子さんによっても違ってきます。夏場は日が登るのが早く(4時には明るくなります)、7時には始まります(もっと早い人もいます)。 夕方は19時まで明るいので長く仕事ができます。最近は5時でも暗く、霜が降りる事がよくあります。そのため8時から始め、暗くなる17時には終わります。夏でも秋でも一日の本数(僕は50本、かき子さんは100〜120本)は変わらず、朝から晩までかかります。夏場は漆が良く出るため時間がかかります。秋は同じ本数でも出が悪くなるので早く終わります。そのため日照時間とほぼ変わらない作業時間でした。 その日の漆かきが終り、取った漆の重量を計り木の樽(大体3貫・5貫目樽)に入れます。そして次の日のために道具の手入れをします。タカッポ(かき樽)内に残った漆を植物性油で洗い固まらないようにします。カンナ(木に傷を入れる道具)、カマ(木の皮を剥いだり、下草を刈る道具)を毎日研ぎます。かき子さんによっては、その日の天気や取れた量等をノートに書いている人もいます。そうして仕事は終わります。 |
漆の木の成長について簡単に報告します。近年植栽が積極的に行われています。しかし、昔はどこの畑でも側には漆の木が植えられ、大きな木が沢山あったそうです。子供達は木に登って遊び、おおげさに言えば「家族」のように大事にされていたそうです。 畑の畦等に数本木を植える時は、漆でした。杉等は背が高くなるので畑に陽が当たらなくなってしまいます。漆はそれほど高くならないので側に植えるにはちょうど良かったようです。かき子はそれらをかく際、所有者から権利を買い、木を傷付け漆を採取します。畑の側にある漆の木は植栽に比べ太くなるのが早いそうです。 畑には肥料を与えます。その栄養が漆の木にも届き成長が早いそうです。植栽は積極的に何度も肥料を与えることはなく、木と木の間隔が平均的に狭いため、栄養が行き届かず成長が畑に比べ遅いようです。浄法寺は日本でも有数の煙草の産地です。煙草には沢山肥料を与えるという事で、煙草畑の脇に植えられた漆は成長がとても早いそうです。今回、畑の側の漆をかいたのは1箇所(10本)、脇で数十本単位で植えられた所2箇所(40本)でした。
|
裏目漆のかき方 2001.10.18 裏目漆のかき方を報告していませんでしたので、簡単ですが説明させていただきます。9月までの辺漆は手の届くところまでを傷つけていました。太い木は、はしごを使って少し上の所まで傷を入れています(僕がかいた木は、はしごを使うほど太くありませんでした)。10月からの裏目かきは、細い木だろうともはしごに登り、木に脚を絡ませ、枝によじ登り上の方まで傷を入れます。 はしごは2メートル弱の木製です。最上段は針金を芯にして縄を巻き付けた構造になっています。脚は尖らせて土に刺さるようになっています。はしごを木に立掛け乗れば、脚は地面に刺さり最上段は針金が木の形に沿って曲がり安定します。傷は左右からつけ、前と後ろで傷がぶつからず、傷が上下で少し重なるようにつけます。出てくる漆は辺漆に比べどろりとしています。色も白く、赤くなるのがとても遅いです(乾きが遅いです)。そのため昔は前日に付けた傷に溜っている裏目漆を取っていたそうです。つまり2回取ることになります。それくらい乾きが遅い漆です。 今は2回取る人はあまりいないそうです。裏目でも乾きが良ければ次の日に取ろう! |
裏目かきが終わりました 今日(16日)で裏目かきが終わりました。4日から始めたのですが、その期間は天気が不安定でした。今週は寒く、先週は比較的暖かく、その前は寒かったです。暖かい方が漆は出るのですが、先週は「変に暖かい」日が続きました。夜から朝方にかけて雨が降ったり止んだり。霜が降りることもなく、日が登る頃にはとても天気が良くぽかぽか陽気。「午後には木も乾いて漆がかけるぞ」と思っていたら、昼に一時的な雨…。結局漆はかけませんでした。 全く同じ現象が3日程続き、暖かいのに漆はかけませんでした。かき子さんも「夕方少しかいただけ」と仕事にならないようでした。枝に葉が残っていれば良い漆(末辺に近く、空気に触れるとまだあかくなる。裏目漆は、しばらく経っても変わらなく白い。)が出ます。しかし今はどんどん葉が落ちていっています。そして20日を過ぎると漆が出なくなるそうです。とりあえず裏目かきが終わってほっとしています。 以上になりますが、裏目漆のかき方と性質を説明していませんでしたので、順番が逆になってしまいますが次回報告したいと思います… |
2001.10.15 タカッポの作り方おはようございます。山に行く途中に送信しました。 以下が今回の日誌です。 タカッポ(カキタル)の素材(木の皮)の選択理由や作り方を報告します。構造は木の皮を丸い筒状にし、底板を付けます。その容器に紐を付けて持ち歩き、傷口からしみ出た漆をヘラですくい入れていきます。木の皮はホウ、マンダから取ります。タカッポを使用する際、容器の口回りを叩いて繊維をほぐします。ある意味"はけ状"にすることにより、ヘラについた漆が綺麗に取ることが出来ます。マンダは特に繊維が強く、昔はその繊維で"ミノ"を作っていたそうです。皮を木から剥がす時期は、梅雨頃が一番木が水を吸っていて剥がれやすいそうです。 実際にホウの木(直径25センチ位、高さ20数メートル)を切り倒して皮剥がしを手伝ったのですが、その時はまだ少し時期が早かった(7月1日、雨)為、少し剥がれにくかったそうです。「一週間早かったな」と、かき子さんが言っていました。それでも初めて体験した僕にとってみれば「木の皮ってこんなきれいに剥がれるんだー」とびっくりしました。 取った皮を手頃な大きさの筒に加工し、底板を接着しました。そのかき子さんは底板に漆の木、接着には麦漆を使用していました。別に接着剤が麦漆で、漆の木でなくともかまいません。違うかき子さんは木工用ボンドで桐の底板を使用していました。その方が作るのは楽で、重量が軽くて良いです。でも、個人的には漆で統一させた方が自己満足が得られました。 |
5ヶ月ほど漆かきの為に生活していましたので、いつのまにか体験が知識になってしまったようです。書く内容はまだ当分尽きないと思いますが、「先にあれを書くんだった!」、「あ!思い出したけど前回の分、もう送っちゃった!」などがたびたびあります。結構行き当たりばったりなのです。 以下が今回の日誌です。 前回に続きますが、雨の日は漆かきに必要な道具を作っていました。かき子さんが雨になると朝迎えに来てくれたり、電話をしてくれました。2日以上雨で山にはいれないことが何回かありましたが、その都度入れ替わり立ち代わりかき子さんが誘ってくれました。「ダカッポ(かき樽、かいているときに漆を入れる容器)の作り方教えてやる」、「カンナ(木に傷を入れる道具)の研ぎ方教えてやる」など、雨の日でも休みではありませんでした(笑)。 しかし皆さん熱心に、惜し気もなく教えてくださったのは本当に為になりました。お陰でダカッポを二人のかき子さんから教わり、4個も作ることができました。作り方がお互い違っていましたが、どちらも大変使いやすいです。大1個、中2個、小1個をそれぞれ、 漆の出る所用、午前中雨のため半日用、など使い分けています。
|
「雨が降る前に急いでかいていたらぱらぱらと降ってきたんだ。出てきた漆を取らなければ傷口が露にならないため雨水は入いらないが、ヘラで漆を取った途端に大雨が降ってきたらその木は駄目になる。今まで何本も駄目にしたなー」。みなさん(かき子さん)経験し、話してくれます。 |
この日誌でこちらでの体験と、時には「問題提議」、少々の「笑い」を提供できればと思っております。 カブレ元々、漆にかぶれる体質なのです。浄法寺に来た頃、会う人会う人に「まけない?」と聞かれました。突然聞かれると"かぶれ"について聞かれているとは分かりませんでした。初めてかぶれたのは大学二年、二十歳だったと思います。それ以来一、二年は漆が嫌いでした。漆を使った先輩が部屋を出ていき、その後自分も部屋を出る際につかんだドアノブが原因でかぶれていました(笑)。それぐらい弱かったのですが、それでも頻繁に漆を使うようになり、酷くかぶれないようになりました。 しかし、現在かぶれています。こちらに来て三回目の酷いかぶれです。裏目漆をかいている最中なのですが、かき子さんに「裏目が一番かぶれる」、「漆が付かなくてもかぶれる」と言われていました。また、「最初はヘラですくえない、"みず"が勢い良く出てくるからな〜」とも言われていました。確に傷を入れたとたんに透明な水が一直線に垂れていきます。サラサラな水で取るのは難しいです。"みず"が最初に吹き出た後に、粘度が高く、"どろり"としたものが出てきます。「これは濃そうだな〜」と思いながら慎重に作業を進め、普段通り夕方前には終了しました。
|
2001.10.7 ご紹介 平成十三年度、日本うるしかき技術保存会の研修生、大西智洋(26)と申します。今年の六月から浄法寺町に於いて、本会長岩舘正二氏より漆かきを学んでいます。最近、泉さんとメル友?になりまして、こちらでの体験が面白いからホームページに特別コーナーを作りたい(実はすでに出来ていた)とのことで最近体験記を載せていただいているようです(本人はまだ見ていません)。見たいのですが、iBookを持っていても現在住んでいる家がアナログ回線(黒電話)のためインターネットが出来ない環境なのです。今月一杯で研修が終わりますので、東京に帰りましたら拝見させていただきます。 漆かきは始めてなのですが、会長をはじめ他のかき子さん達に「初めてにしては上手だ」、「去年の研修生よりも上手だ」(去年の研修生の方怒らないでくださいね)と誉められています。取れた漆も「良い漆だ」と言われます。手を使ったり体を使う仕事が初めてではないので、そこそこの成果が得られているのではないでしょうか。 漆の木はどこを傷付けても漆は出ます。自分の傷を治すために出す樹液なのですから。それを利用する人間が乾いたらとても耐久性があることから漆の採取が始まったのでしょう。(耐久性と言いましたがこの場合塗ったときの塗膜に限定した表現で、そもそも最初に使われた用途が接着剤なのか?器物などに塗った塗料なのか?については論議が尽きないでしょうからこれ以上触れないでおきます)。 採取された漆は「量は取れないが高く売れる」等の理由から、「どうにかして漆を沢山取れないだろうか?」を追求し、試行錯誤の結果、現在僕が教わっています"殺しかき"が近年定着しているようです。先程「漆の木はどこを傷付けても漆は出ます」と書きましたが、"一本の木からいかに多くの漆を採取するか"、"木を弱らせず、品質を落とさず、如何に長期間漆を取り続けられるか"が、かき子さんの腕だったのではないでしようか。現在は以前にも増して「品質」が求められているようです。 |
2001.10.3 裏目漆僕も含め、ほとんどのかき子さん達も9月一杯で辺漆は終了したようです。今年は20辺まで付けられた人はいないと思います(僕は16辺でした)。雨が多かったためです。10月からは裏目漆が始まります(1・2・3日と雨でかけなかったですが…)。昔から「裏目二十日、止十日」(うらめはつか、とめとうか)と、裏目漆をかくのに二十日間、止め漆をかくのに十日かかるということだそうです。年に二十貫目取る人の話です。 |
2001.10.1 漆の話 先日、岩舘会長と車で出かけた際、三時間ほど漆の話を聞きました(いろんな意味で辛かったです)。 昔、赤地友哉先生に"昔の漆器は現在まで綺麗に残っているので丈夫なことは分かるが、現在の漆は昔に比べ弱くなっているように感じる"って言われたことがある」(岩)。 「この間、昔よりも漆が弱くなった?ことについてあるかき子さんが"昔よりも細い木をかくようになったからでは?"という意見が出ていました」(O)。 結局結論は出ませんでした。"漆が昔よりも弱くなった?"と感じている人は少なからずいるようです。 |