工房探訪記

第 4回 輪島漆芸技術研修所

2003年7月6日

 
今回、石川県立輪島漆芸技術研修所さんに呼んでいただき刷毛作りの実演とお話をさせていただくことになりました。

父親の八世 泉清吉が呼んでいただいてお話をしたのが、私が確か25−6才頃だった記憶があります。当時、前夜には、宿泊の旅館で故・赤地友哉先生の講義があり、研修所の生徒さんや皆さんはものすごい熱心さで聞いておられ 、その迫力に圧倒された事を思いだします。

その後、わたくしは輪島には、国民文化祭に出たりして何回か行ってはいたのですが、ここ10年はまったくご無沙汰していました。

今までは飛行機や電車で行っていましたが、今回は実演の荷物もあ ることであり、電車では頭痛のしてくるわたくしは思いきってクルマで行ってみました。走ってみると思ったよりも高速もすいていて楽で快適 な小旅行となりました。

←人間国宝、輪島漆芸研修所所長の大場松魚先生と。


前夜には、木地師の寒長茂さん、(左2番目)塗師の長井均さん(真ん中)、漆の他に雑誌に連載をしたり本を出版したりの赤木明登さん(右)、 そして研修中の与世田愛さん(左)に歓迎会をしていただき、たのしいひとときを過ごしました。有難うございました。

この夜は、ちょうど輪島の「工房長屋」の開設式でもあり、さらに「能登空港」が開港ということで大いににぎわっていました。

知り合いの塩士さんやいろいろな方に久しぶりにお会いできて心も弾みます。

翌日の実演では、金沢美大大学院教授、輪島漆芸美術館館長の柳橋先生、小森邦衛さんも実演会場にお見えになり、私は汗がタラタラです。大場先生、柳橋先生の目の前での実演?これでは、認定 再試験ではないですか!ヘタな冗談や適当な作業では大変な事になりそうで、どうしたものかと頭の中がクラクラとするくらいでした。


柳橋先生には、文化庁におられた時からお世話になり、私が漆刷毛の修行を始めて3カ月ほど経った時、父親八世 泉清吉と町田のお宅におじゃまさせてもらい、スキヤキ鍋までご馳走になった思い出があります。

実演のときにご紹介していただいたり、お世話になったのが築地さんです。築地さんは私の実家と同じ町内、東京文京区千石のご出身で私は小・中・高校と築地さんの家の前を通っていたのです よ。なんというご縁でしょうかね。

覚悟を決めて、最高に気合いを入れて、刷毛の作業にかかりました。やっている内になんとか調子も出てきて、皆さんに質問してもらいながら進んでいく事ができました。私一人でしゃべり、作業する事はとてもやりにくいのですが、質問に答えながらの作業は、なんだかとても楽にできるものです。

後列左より中野孝一先生(漆芸作家・蒔絵)、鶴田悦子先
生(漆芸作家・沈金、大場先生のお弟子さんです。)、星野次長、築地先生です。

 


落ち着いて会場内を見渡すと、お忙しいのに塩多さんや赤木さん塩路さんや知り合いの方がたくさん見えてくれていました。本当に有難うございました。 人情があります。感涙にむせぶわたくしでございました。

お元気な大場先生にもお会いでき、とてもうれしい今回の実演でした。先生には広重印の刷毛を製作してまだ未熟な時から刷毛を使っていただき、本当に感謝してもしきれません。

最後に会場をクルマで帰るときには、わざわざ大場先生には研修所の玄関まで来ていただいて感恩にむせび、私はクルマの中で何度も頭を下げました。能登の心地よい風を窓から入れながらハンドルを握りました。有難うございました。

写真 工房長屋の開所式